元カレ救命医に娘ともども愛されています
現場にはすぐに警察官が駆け付け、私と真優紀は念のため救急車に乗せられ病院へ搬送された。
二度目の救急車は娘と乗ることになったが、確かに転倒のシーンを見ていないので、真優紀が頭を打っていないとは言えない。地元の救急病院ですぐに検査してもらえたのはありがたかった。
幸い、私は膝の打撲と擦り傷、顔のひっかき傷だけ。真優紀は脳波なども異常なく、右手の擦り傷を消毒してもらい終わった。
真優紀には怖い思いと痛い思いをさせてしまい、一瞬でも隙を見せた自分が悔しくてならない。同時に、怪我がこの程度で済んだことは奇跡的で、神様がいるとしたらこの点だけは感謝したいと思った。

診察が終わる頃には、和馬と琴絵さん、浅岡さんが駆け付けてくれた。こちらの状況は細かくメッセージを入れておいたので、私と真優紀が無事なのは三人とも知っている。
それでも、がらんとした暗いロビーにいる私たちの姿を見るなり、和馬は言葉もなく駆け寄ってきて抱きしめた。

「ぱっぱあ!」

眠くてぐずっていた真優紀は和馬の顔を見て声をあげた。そんな真優紀の笑顔も、和馬には胸が痛むことのようだった。

「すまない。こんな形で巻き込んでしまうなんて……」

私の肩に顔を埋め、苦しそうに悔やむ和馬。私はその背に腕をまわした。

「和馬はあのとき、ちゃんと対応してくれたじゃない。予見できなかったよ、こんなこと」

麗亜さんは私に加害を予感させる物言いをした。だからこそ、和馬は峯田家に再度談判に赴いている。向こうの親御さんは彼女にストーカーまがいの行為はさせないと約束したはずなのだ。
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