元カレ救命医に娘ともども愛されています
「麗亜さん、どういうつもりであんなこと……」
「今、警察で聴取されてるよ。月子への暴行で逮捕されてるから」

和馬が苦々しく言った。
私と真優紀は早々に救急車に乗せられたので、その後の事態はわからなかった。逮捕……そうなってもおかしくないことをしたのは彼女だ。あの場で止められていなかったら、真優紀がどうなっていたかもわからない。
和馬は抱擁を解いて、立ち上がる。表情は沈鬱なままだ。

「警察からの電話によると、月子に道を聞いた女性は、麗亜さんが雇った人間だった。彼女の計画は知らなかったと言っているようだ。おそらく、俺もきみも改めて事情は聴かれるだろう」
「月子」

琴絵さんが私の前に来て、いたわるように肩に触れた。泣き出しそうな顔をしている。

「あなたと真優紀が無事でよかった」
「琴絵さん、心配かけてごめんなさい」
「さあ、ひとまず家に戻ろう。月子ちゃんも真優紀ちゃんもくたくただろう」

浅岡さんに促され立ち上がると、エントランスの自動ドアが開くのが見えた。前方からやってくるのは五十代と思しき男女。和馬が表情を変えた。

「峯田さん……」

どうやら麗亜さんの親族……おそらくご両親だ。
ふたりは真っすぐに私の前にやってきて、深々と頭を下げた。

「この度は娘が誠に申し訳ないことをしました。心よりお詫びします」
「あの……」

なんと返したものかわからない。ただ顔をあげたご両親が憔悴しきった様子なのが気の毒だった。

「麗亜さんの行状については、ご報告とご相談をしたはずですが」

和馬の声は底冷えするほど冷たいものだった。
峯田夫妻は再び頭を下げた。
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