元カレ救命医に娘ともども愛されています
「麗亜さんには相応の罰を受けていただきたい。未成年者誘拐未遂、傷害は刑事罰。民事でも訴えます。私たちに二度と近づく気を起こさないよう、徹底的に闘います」

私は狼狽した。和馬は本気だ。示談の申し出を蹴って、麗亜さんが起訴され裁かれることを望んでいる。琴絵さんと浅岡さんの怒りも後押しするだろう。

「待ってください」

ようやく、私は口を開いた。ここで私が意見しないと、望まない方へ行ってしまう。

「示談を受け入れます」

誰の反論も挟ませないよう、はっきりと言い切った。
峯田夫妻が顔をあげる。

「麗亜さんが追い詰められて、こういった行動に出たことを許すつもりはありません。二度とお会いしたくないと思っています。ですが、これ以上つらい目にあってほしいとも思っていません」
「月子」

和馬が私を呼ぶ声には怒りも憤りもなかった。ただ心配そうだった。
彼はもうわかっているのだ。私がこういう選択をすると。

「私の気持ちはそれだけです。ここからは専門の人たちを挟んでやりとりをしましょう。条件が決まれば、被害届は取り下げます」
峯田夫妻が崩れ落ちそうになりながら、「ありがとうございます」と頭を下げた。
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