元カレ救命医に娘ともども愛されています
家に戻るとまずは真優紀を寝かせ、それから大人四人でリビングに集まった。

「うちの弁護士に連絡を取った。峯田家の件で以前も世話になっているから、彼の方で話をまとめてもらう。俺も明日、直接会って話してくるよ」
「和馬、ありがとう。あなたをアテにして、あんなふうに言ってごめんなさい」
「それはいいんだ……」

和馬は複雑そうな表情。彼の言いたいことを琴絵さんが代弁するかのように口を開いた。

「本当に示談でいいの? 刑事でも民事でも訴えていい状況だし、罰を与えないとまた月子たちにちょっかいを出してくるかもしれないよ」
「事件にしなくても、逮捕歴は残る。それだけで、充分彼女には罰だよ。これ以上は余計に恨みを溜めることになると思う」
「報復が怖いってこと? こっちこそ、仕返しできるならしてやりたいくらいなのに?」

怒りがおさまらない様子の琴絵さんに、私は首を横に振った。

「というより、因果をここで断ち切りたい。私たちがこの件を呑み込むことで、彼女には完全にこちらと決別してもらいたい。この先、何があっても真優紀を危険に晒したくないの」

私だって本音を言えば、彼女を許せない。利己的な思い込みで真優紀を傷つけようとしたのだ。あの瞬間の恐怖は私の心に刻まれ、何度も思い出しては背筋を寒くさせるだろう。
だからこそ、私は大人になろうと思う。嫌な気持ちも恨みも呑み込んで、この悪い流れを終わらせる。真優紀に二度と手を出さないと誓わせることで、許しを与える。

「禍根を残したくない。すべては真優紀のために」
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