元カレ救命医に娘ともども愛されています
「……月子の気持ちはわかったよ」

和馬が深く頷いた。きっと和馬は思うところがある。だけど、私の気持ちを尊重してくれたのだろう。

「きみの希望通りになるよう、弁護士に頼む」
「ありがとう、和馬。……それとね、もうひとつお願いがあるの」

和馬と想いを重ね、もう一度歩んでいこうと決めたときから考えていた。その気持ちが、今日の一件で強くなった。

「あなたのお父さんに、あらためて会いに行こう」
「月子……、きみが嫌な思いをする」
「それでもいい。お父さんが認めてくれなくても仕方ないと思ってる。それでも、私たちなりに筋を通そう。お父さんと麗亜さんを一緒にするつもりはないけれど、やっぱり禍根にならないようにしたい」

私たちが勝手に結婚すれば、お父さんは不快な気持ちのまま。仮に絶縁という態度を取っても、いつか真優紀が成長したときに後継の問題を含めて巻き込ませたくない。
私の言葉に、琴絵さんが渋い顔で言う。

「月子たちが挨拶をしても、和馬くんのお父さんの気持ちを逆撫でするだけじゃない?」
「いや、一度も挨拶に行っていないなら、改めて挨拶に行くのは意味があるよ。あちらは、挨拶に行きたがっていた月子ちゃんをずっと拒否していたんだろう。形にこだわる人だと思う。それに、ふたりには結婚前の区切りになるんじゃないかな」

浅岡さんが言い、琴絵さんが困惑しつつも頷いた。

「和馬、お願い」
「……わかった。俺から提案すべきことだったんだな。必ず、きみと真優紀を父に会わせる」

和馬はそう言って、私の手に自身の手を重ねた。
< 136 / 158 >

この作品をシェア

pagetop