元カレ救命医に娘ともども愛されています
10.今度こそきみを離さない



長い夏が終わり秋がやってきた。
九月の終わり、私たちは新居に引っ越し、婚姻届を出した。諸々の手続きは煩雑だったけれど、それらを終えてやっと家族になれたときは晴れがましく嬉しい気持ちになった。
新居は和馬の勤務先まで電車で三十分の立地。車でもそうかからず到着できるので、深夜など車が少ない時間帯ならもっと早いかもしれない。
琴絵さんが浅岡さんの家に引っ越したので、ふたりの家までは電車でも車でもそう遠くない。ちょっと頑張れば自転車でも行ける範囲なので、琴絵さんは「なにかあったら自転車で駆けつける」と言ってくれている。
中学三年生からずっと一緒に暮らした琴絵さんとの同居解消は、やはりとても寂しく、最後の晩はふたりで泣きながらパーティーをした。私にとってお姉さんでお母さんが琴絵さんだった。
真優紀は「こっしゃん、しゅき」と出始めたばかりの二語文で琴絵さんへの気持ちを述べ、余計に琴絵さんを号泣させていたっけ。

和馬のお父さんからは、引っ越しと入籍のお祝いにお金が届いたそうだ。和馬が「不器用な人だから」と手紙も電話もなかったことに肩をすくめていた。そう言う和馬もまんざらでもなさそうだった。父子関係は少しずつ改善していくだろうか。

峯田麗亜さんの事件は、弁護士を通して示談で決着した。麗亜さんは精神的な療養を兼ねてしばらく海外生活を送るとのことだ。おそらくはご両親が私たち家族に近づけないように配慮したのだろう。彼女への憤りは消えたわけではない。だけど彼女が回復し、いつかこの事件を心から後悔してくれる日がくればいいと願っている。
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