元カレ救命医に娘ともども愛されています
「さあ、今日からパパとママと真優紀の三人暮らしだよ」

まだ片付かない引っ越し荷物に囲まれ、和馬が張り切った声をあげた。真優紀が「やったー」と声をあげ、その場でジャンプした。
新築戸建ては都内の住宅事情もあり、そう広くはないけれど、それでも子ども部屋や客間も含めて立派なものだと思った。

「真優紀のお部屋に案内してあげようね」

和馬は真優紀を抱き上げて二階へ連れていく。
二階の洋室には真優紀の荷物を入れた。この部屋を使うのはまだ先だろうけれど、真優紀は自分のスペースが嬉しいようだ。ぬいぐるみを段ボールから引っ張り出し、フローリングの床をころころと転がってはしゃいでいる。

「和馬、あらためて今日からよろしくね」
「こちらこそ」

和馬はにこっと精悍に笑った。再会して間もなく一年、あの頃よりいっそう包容力が増したように思える。それは私の心が動かされているからなのかな。

「どうした? 月子」

思わず目をそらしてしまい、和馬が腰をかがめて覗き込んでくる。好きだなあと実感したら、まっすぐに顔を見られなくなってしまっただけなのだけれど、恥ずかしいので口に出せない。

「なんでもない」
「それなら、いいよ」

和馬は私の頭を撫で、荷物の片づけに一階に降りていった。
ああ、結婚して家族になって、私はどんどん和馬を好きになっている。昨日よりも今日、今日よりも明日。もっともっと和馬を好きになる。
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