元カレ救命医に娘ともども愛されています

それはどういう意味だろう。
ワインが到着し、コースの前菜が運ばれてくる。
他愛ない話をしながら、食事を楽しんだ。どれも綺麗で美味しくて、こういった店に馴染みない私は、「美味しい」以外の語彙がなくて悔やまれるくらいだった。
コースの最後にデザートのアイスクリームとコーヒーが運ばれてきた。大満足のディナーだった。円城寺くんは、こういった一流店に私を連れてきたかっただけのようだし、素直に喜んでおこう。変に期待してしまったのは恥ずかしいけれど。
すると、すでにデザートが出された私たちのテーブルに、新たにクリームがバラの形をした小さな丸いケーキがやってきた。私の前にことんと置かれる。

「わあ、可愛い」
「こちらもどうぞ。バラのリキュールです」

一緒に出されたのは小さなグラスに入ったローズリキュール。顔に近づけると、強いバラの芳香を感じた。

「最後にバラ尽くしなんて素敵。これも円城寺くんの計らいでいいのかな？」
「そうですね。あとはこれを」

そう言って円城寺くんは私にバラの花を一輪差し出した。

「一、二、三。バラを三つ用意しました」

首をかしげる私に、彼は照れたように視線を逸らせる。

「キザなことをして気づかれないのも恥ずかしいんですが、三本のバラには花言葉があります」
「三本のバラ……それって」

確か、バラの花言葉は本数で意味が違ったはず……。答えを聞く前に私の頬はかーっと熱くなる。

「『あなたを愛しています』……最初から口で言えばよかったですね」

わずかに頬を赤らめて口元を押さえる彼と、真っ赤な顔でおろおろする私。

「まどろっこしいし、キザですよね。反省します」
「いや、花束でも気づかないよ。私、鈍感だから」
「そこは気づきましょうよ。……返事、急ぎませんので」