元カレ救命医に娘ともども愛されています
式場のカメラマンによる集合写真の撮影は、ちっともじっとしていなくて、みんなで何度も「お姫様!」「真優紀姫、こっちへ!」と声をかけながら行った。なお、一度式場の小広間から飛び出し、タキシード姿の和馬が走って捕まえに行った。
食事会は真優紀がお父さんの膝にのりたがった。お父さんが食事できなくなってしまうのでどかそうと思ったけれど、「親父も喜んでるからいいよ」と翔馬さんがあっさり引き受けてくれた。
さらには翔馬さんが上手におだてるので、少々ムラ食いの気のある真優紀は出された幼児用のコースメニューをほとんど完食したのだった。これにはみんな驚いてしまった。これらのシーンはみんな私と和馬によって撮影されている。

私たちの式は本当にささやかだったけれど、いい式だった。この先、折に触れて思い出せる家族の記憶になったはずだ。
式を終え、家に帰り着くと、日はとっぷり暮れていた。
案の定はしゃぎ疲れてお腹もいっぱいの真優紀は、ぐっすり眠ってしまった。ちょっとつついたくらいでは起きないので、お風呂も着替えも明日がよさそうだ。

「和馬、お疲れ様」
「月子も」

ふたりでリビングのソファで乾杯した。お酒は式でそれなりに飲んだので、ジンジャーエールで乾杯だ。

「楽しかったねえ」
「ああ、兄さんが明るいから父さんが気まずくならないで済んでよかったよ」
「むしろ、真優紀がべったりでお父さん疲れたんじゃないかな」
「それもいい思い出になっただろ。写真をたくさん撮ったから、父さんは後々自分がどんな顔で真優紀に接していたか確認するといい」

和馬はそう言って笑い、グラスを置いて伸びをした。仕事の合間に計画を進めた結婚式。私も和馬も疲れていたけれど、達成感を覚えている。
< 155 / 158 >

この作品をシェア

pagetop