元カレ救命医に娘ともども愛されています
「あ、琴絵さんは大丈夫だったかな。彼女、あまりお酒が強くないだろ?」

琴絵さんは食事会ですっかり酔っ払い、浅岡さんに抱えられてタクシーに乗って帰宅した。なお、秋に事故にあった浅岡さんは後遺症もなく完全復活し、今日の式も万全の状態で参列してくれた。

「琴絵さん、お酒は弱いけど嫌いじゃないのよ。今日は嬉しかったからハメを外しちゃったんじゃないかな」
「そうか。彼女が楽しく飲んでくれたなら、よかった。浅岡さんが回収していったしね」
「慣れた感じだったね~」

不意に和馬が私の髪を撫でた。優しい手つきに私は照れくさくなって微笑む。

「なあに?」
「月子のウエディングドレス姿、すごく綺麗だったな」
「ありがと。和馬も格好よかったよ。絵本の王子様みたいだった」
「月子と真優紀の王子様になれるなら嬉しいよ」

私は和馬の背に腕を回し、ぽんぽんと叩いた。和馬の腕の中はいつも安心する。ここが私の居場所なのだと実感する。

「もうとっくに私たちの王子様だよ。いつも本当にありがとう。結婚式、できてよかった」
「月子」

和馬が顔の角度を変え、そっと私の唇にキスを落とした。

「なあに?」
「改めて誓わせてほしい。今度こそきみを離さない。一生かけて幸せにする」
「私もそのつもり。離れたりしない。人生の全部をあなたと分かち合っていきたい」

和馬の大きな手が私の頬を撫で、親指が確かめるように唇に触れた。私たちは再びキスを交わし、言葉にする。

「ずっと一緒だ」
「うん、ずっとね」

ゆっくりと春が近づく三月の晩、私たちは新たなスタートを切った。
愛を確認し、未来を誓った日。今日を忘れない。
< 156 / 158 >

この作品をシェア

pagetop