元カレ救命医に娘ともども愛されています
エピローグ
スマホを片手にオフィスのエントランスを出ると、地下鉄の出口から手を繋いで歩いてくるふたりを見つけた。

「ママ―!」

元気に手を振るのは真優紀だ。二歳半になり、益々活発な女の子に成長中の愛娘。
私の忘れ物の書類ケースを掲げて見せるのは和馬。

「あ~! ふたりともありがとう! 助かったよ!」

駆け寄ってケースを手渡してくれる真優紀を、私はぎゅっと抱きしめた。

「和馬、ありがとう。ただでさえ、休日出勤で真優紀の面倒を任せてるのに、忘れ物まで届けてもらっちゃって」

真優紀を抱き上げつつ御礼を言うと、和馬は優しい笑顔で答える。

「真優紀と散歩しようと思ってたからちょうどいいよ。真優紀、ママに会えてよかったなあ」
「ママ、ちごとね」

真優紀が「えらいえらい」と私の頭を撫でた。娘に褒められるのはまんざらでもない。こんなふうにママを労わってくれるようになったのだと成長を感じる。

「ダッシュで仕事を終わらせて、なるべく早く帰るからね」
「それは嬉しいけど、夕飯は俺が作るから気にしなくていいよ」
「本当? 大丈夫? 材料、何か家にあったっけ」
「大丈夫、帰り道に買い物をするから」

真優紀の面倒を見ながら買い物をし、夕飯を作るのは結構大変なのだ。和馬はよく手伝ってくれるけれど、ワンオペの経験はまだそう多くない。
思わず心配そうな顔をしてしまう私に、和馬が胸を張って請け負った。

「俺にまかせなさい。なあ、真優紀」
「ねー」

そう言うならふたりのチームプレイに任せよう。
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