元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬との交際は順調そのものだった。思えば、大学時代は両片想いの状態だった私たち。ようやく愛を伝え合える環境になり、お互いに気持ちが止まらないのだと思う。
会えば幸せで情熱に満ちた時間を過ごし、未来の約束を重ねた。実際、和馬は父親に会ってほしいと私に言った。私も、琴絵さんと和馬が会う機会をセッティングした。
和馬のお父さんと会う機会はあちらの都合で決まらなかったものの、琴絵さんを交えた三人の食事会はとてもいい時間だった。

「月子がお嫁に行くなら、喜んで送り出す」「ひと仕事終えた気分だよ」琴絵さんはしきりにそう言った。親代わりだった琴絵さんに、結婚したい相手を紹介できたのは私にとっても喜びだった。私が家を出れば、琴絵さんは恋人の浅岡さんと同居を始めるかもしれない。

「和馬くんはお父さんとお兄さんがいるんだよね。婚約となったら家族で顔合わせかな。緊張するなあ」

琴絵さんがわくわくした様子で言い、私は苦笑いだ。

「気が早いよ、琴絵さん。私も仕事が忙しいし、すぐに結婚は考えてないんだから。ゆくゆくはって話。それに琴絵さんが緊張することないじゃない」
「緊張するわよ。ぴかぴか綺麗な叔母になるためエステに行っちゃう」
「エステなんて行ったこともないくせに~」
「健康ランドのエステは行ったことあります~」

私たちの笑顔をよそに、その一瞬だけ和馬の表情が曇ったように見えた。

「和馬?」

様子を伺うと、彼はすぐに笑顔になった。

「なんでもないよ」

本当にそうだろうかと不安に思う私をよそに、和馬は琴絵さんに向かって口を開いた。

「兄も医師ですが、国際支援で途上国に行っています。顔合わせに呼んで来るかは微妙ですが、結婚式には絶対にきてもらいますので」
「まあ、海外でお医者さまを。ご立派ねえ」

琴絵さんが感嘆の息をつき、私はなんとなくの違和感を飲み込んだ。
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