元カレ救命医に娘ともども愛されています
「月子にとっては親同然の琴絵さんに挨拶できてよかったよ」

恋人の家へ向かう琴絵さんと別れ、私は和馬について彼のマンションに向かっていた。休日のランチタイムの会食だったので、まだ夜までは和馬と過ごせる。

「ねえ、和馬、やっぱり私も早くお父さんにご挨拶したいな。お忙しいのはわかるんだけど、けじめっていうか」
「……ああ。もう少し待っていてほしい。あちこちで会議が多くて本当に多忙のようでね」
「うん、それはもちろん」

マンション前までやってくると、和馬がぴたっと足を止めた。見ればエントランスに人影がある。向こうがこちらを見て、自動ドアを抜けて外へ出てきた。

「和馬、どこへ行っていた」

初老にさしかかる白髪交じりの体格のいい男性が和馬を呼ぶ、和馬は厳しい顔をして対峙した。

「来るときは事前に連絡をと言っただろう」
「父親になんて言いぐさだ。今日は時間を空けろと言っておいたはずだぞ」
「その件については断ったじゃないか、父さん」

そうかなとは思ったが、和馬が男性を父と呼んだ。ちょうど会いたいと話していた和馬のお父さんとこんな形で対面することになるなんて。

「あの、初めまして……」

剣呑なふたりの間に入るのはどうかと思ったが、仲裁になるのではないかと口を開いた。

「武藤月子と申します。和馬さんとお付き合いさせていただいています」
「ふん」
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