元カレ救命医に娘ともども愛されています
2.すれ違い
「ごめん、ちょっと混乱してる」
和馬の部屋に到着し、私はカウンターチェアに腰掛けた。カウンターに肘をつくと自然とため息がもれた。正面に立った和馬はうなだれ、沈鬱な顔をしている。
「すまない、月子。きちんと説明しないで」
「……お父さんは、私との交際を反対してたんだね」
言いながら、和馬がこのことを隠していたのを恨めしく思った。何も知らない私は、のんきにいつか挨拶に行けると思っていたし、相手の気持ちも知らずにぬけぬけと恋人だと挨拶してしまったのだ。
「昔から父はああいう人なんだ。女性を馬鹿にした発言をするし、母との離婚理由もそれだ。俺と兄は、病院の利益になる女性と結婚しろと言われ続けてきた。兄の翔馬は父に嫌気がさして海外に行き、余計に俺への圧が強くなったんだ」
和馬は嘆息するけれど、私の中にはもやもやが渦巻いている。
「具体的な縁談も進んでいたのね」
その部分はものすごく引っかかる点だった。私と付き合いながら、裏では縁談が進んでいたなんて、裏切られたような気持ちだ。
「誤解しないでほしい。俺は断ってるんだ。父が勝手に相手方と話をまとめようとしている」
「……利益になる女性ってお父さん言ってた」
「ああ、……峯田物産グループ総帥の孫だそうだ。大学を出たばかりの二十二歳。父の価値観からすれば『俺に相応しい相手』だそうだ。俺の意見を無視して、何が相応しいだかわからないよ」