元カレ救命医に娘ともども愛されています
吐き捨てるように言って、和馬は再び私に向き直り頭を下げた。

「本当にすまなかった。月子に言わなかったのは、父を説き伏せるつもりだったから。こんな形で、月子との対面させるつもりはなかったんだ」
「忙しいとか都合がつかないとか……嘘だったんだね。私は正直に言ってもらった方がよかった」
「きみを傷つけたくなかった。結果として、きみを傷つけ嫌な思いをさせてしまった。反省している」

和馬が私を庇うために隠していた気持ちは理解できる。だけど、結婚を考えてくれているなら、隠し事はないほうがいい。家族の問題はスルーはできないのだ。

「月子、俺は結婚するなら月子とだと思っている。一生一緒に歩むのは月子しかいない」
「和馬」
「父は絶対に説得する。もう少し待っていてほしい。もし、駄目なら父と縁を切ってもいいと考えている」

それは駄目だ。親子の縁を切るなんて簡単に考えていいことではないし、何よりそう簡単に切れるものでもないはずだ。
それに、すでに実の両親がいない私からしたら、和馬の言う『縁を切る』はものすごく浅い考えに思えてしまった。

「とにかく、お父さんと話をして。私もあらためてご挨拶にいく準備をしておくから」
「ありがとう、月子」

そのときだ。和馬の仕事用のスマホが音を立てて鳴り響きだした。付き合い始めてから何度かあったのでわかる。高度医療救命センターからの緊急の呼び出しだ。
電話を終え、和馬が私を見た。

「呼び出しでしょ。すぐに行かなきゃ」
「すまない、月子。話の途中なのに」
「いいよ。気にしないで」

私は不器用に微笑んで、腕にかけていた秋物のコートを羽織り直した。

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