元カレ救命医に娘ともども愛されています
新しい年が始まり、私は新しいプロジェクトのメンバーになった。
前回よりも大きな規模で、いっそう忙しくなるのは目に見えていた。しかし忙しさにかまけていると、和馬と会う機会を逸してしまう。和馬と休みを合わせる努力はしなければいけない。
和馬はお父さんとの話し合いを続けていたが、私の対面は叶っていなかった。詳細は話してくれないが、結婚の許しは出ないのだろう。
恋人の家族に認めてもらえないというのは、悲しいことだった。和馬の父親が初対面時にとった態度から、女性蔑視の強い人なのだろうと感じていたけれど、彼を育てた人から『不適格』の烙印を押されるのは傷つく。しかしそれを言えば和馬は焦るし、父親との溝は深まるだろう。私にできることは待つだけ。
まったく進展がないままひと月、ふた月と時間が経っていった。

「どうやっても、私のことは認められないのかな」

ぽつんとつぶやいたのは、和馬の対話が何度目かの失敗をたどった後だった。
和馬の家で、私たちはコーヒーを飲んでいた。

「このまま父の顔色を窺っていたら、埒が明かない。月子、やっぱり俺は父と縁を切ってでも月子と結婚に向けて動き出したい」
「縁を切るなんて簡単にできることじゃないよ。和馬が縁を切るって言っても、お父さんから和馬への連絡は来るだろうし、同じ業界で働いていれば不都合も起こるんじゃないかな」
「確かに済々会病院の院長の権力は強いよ。知人も多いし、父に睨まれたくない医師もいるだろう。でも、俺には関係ない」
「私は……家族なんだし仲良くできる方法を模索してほしいとは思うよ」

両親を亡くしている私の希望だ。生きて話ができる以上は諦めてほしくない。
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