元カレ救命医に娘ともども愛されています
すると、和馬がめずらしく険しい顔のまま私を見た。

「月子の考えは甘いよ。きみの願い通り父と話し合いを続けてきたけれど、やはり話が通じる相手ではないんだ。俺もきみもいい大人だし、ふたりの判断で結婚はできる」
「そうかもしれないけど……」
「それとも月子にとって、俺はそこまで価値はない？」

驚いた。和馬が卑屈ともとれるような言葉を口にするなんて。いや、きっと和馬も焦れているのだ。

「なんでそうなるの。和馬のこと、大事に決まってるじゃない」
「じゃあ、俺は一緒に覚悟を決めてほしい。ふたりで生きていく覚悟を。俺は月子を愛しているよ。そのために父親と決別してもいいと考えてる」

私の無言に和馬は深いため息をついた。呆れたような残念なようなため息だった。
その様子に私の中で言いようのない苛立ちが強まる。
和馬の気持ちはわかる。私だって、ひどいことを言う和馬のお父さんを無視して、和馬と結婚したい。そうしてもいいと思っている。
だけど、結婚は家と家の繋がりで、一生の問題だ。ここで和馬がお父さんと禍根を残すことで、将来的にどんなトラブルになるか想像できない。すっきりとカタをつけられるなら、そうしてから進みたいのだ。
それと同時に私の中でくすぶり続けている気持ちがある。
多忙な私たちが、結婚というスタイルをとって、うまく暮らしていけるだろうか。今の恋人同士の距離感の方が、お互いのリズムを邪魔しないのではないだろうか。
和馬の生活を全面的にサポートすることは私にはできない。
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