元カレ救命医に娘ともども愛されています
「和馬、縁談については本当にもういいの?」
「無理やり食事会に出させられたけれど、今は結婚する気はないって向こうの家には言ってきたよ。お相手の令嬢本人にもね」

食事会の話は初耳だ。私が聞いて不愉快になると思って、わざわざ言わなかったのかもしれないけれど、裏で縁談相手に会っていたのはすごくもやもやした。

「今は……って、中途半端な答えだね。いずれは結婚するって意味にとらえられない?」

つい口をついてでた言葉には険があって、私自身が驚いてしまった。

「向こうがそう捉えるとは思えないけど、まだ何か言ってくるならあらためて断るつもりだ」

毅然と言う和馬に、不信感を覚えては駄目だ。結局、お父さんや相手方の顔色を窺っているんじゃないかと疑ってはいけない。

「月子、俺はきみを不安にさせたくない。父のことでは負担をかけていると思っているけれど……」

私は立ち上がり、食器をシンクに片付けた。普段なら洗って帰るけれど、今日は和馬に任せよう。このままここにいたくない。

「ごめん、今日は帰るね」

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