元カレ救命医に娘ともども愛されています
「きみの素性は調べた。中学生のときにご両親が事故死。叔母に育てられ、今も同居している、と」
「……そうです」

探偵を雇って調べるくらいのことはされるだろうとは思っていた。私にはなんの後ろ暗いところもない。好きに調べてもらって構わない。

「一般家庭の生まれの上に、ご両親が亡くなる直前くらいはきみも少々荒れていたようじゃないか」
「思春期だったので、両親に反発する時期でした。誰でもあることです」

家出をしたり、暴力があったわけではないけれど、思春期の頃は両親とあまりしっくりいかず、怒鳴り合うような喧嘩もしょっちゅうだった。
そのまま両親を事故で亡くしてしまったため、私の心には深い後悔がある。

「しつけも済まないうちに、親がいなくなったのは不憫だったね。しかし、そんな女性にうちの和馬が騙されたのは残念だ」

しつけが済む……犬や猫でもあるまいし、なんて言い草だろう。

「騙すというのはどういうことでしょうか」
「今までも和馬は私の勧める縁談をすべて断ってきた。今回の縁談こそは絶対にまとめたいというのに、きみ以外と結婚する気はないと言って聞かない。一体、どんな調子のいいことを言って誑し込んだのか」
「私と和馬さんは愛し合っています。未来を誓い合っています。他の女性が入る隙はありません」
「強い口調だね。叔母さんの教育かな。それとも、女性がこういう大きな職場で男性顔負けに仕事するには、そういう強さが必要なのかね」

和馬のお父さんは馬鹿にしたような笑みを浮かべて言った。

「和馬には一歩下がって男をたてる良妻賢母な女を娶せるつもりだ。きみのような男まさりは、うちの嫁にはいらないんだよ」
< 32 / 71 >

この作品をシェア

pagetop