元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬と別れて、2週間が経った。
私と琴絵さんが暮らすマンション前の桜もつぼみが膨らみ、開花間近だ。年度末の慌ただしい業務を終え、私は帰宅中だった。時刻はすでに二十二時。
ここ数日ずっと体調が悪く、業務効率が上がらない。身体がだるく熱っぽい感じで、胃がむかむかするのだ。風邪ではないだろう。
心当たりは感じていた。どんどんひどくなる症状に、疑問をそのままにしておいてはいけないのだと痛感する。
今日、私は帰り道に閉まる直前のドラッグストアであるものを買ってきていた。

「月子、おかえり~」

リビングで漫画を読んでいた琴絵さんが顔をあげる。

「夕食食べた? 月子が食べられるかなーって、リゾット作ったんだけど」
「ありがとう。少し、いただくよ。ちょっとトイレに行ってくるね」

上着や鞄を自室に置き、トイレで買ったものの包装を開ける。スティック状の妊娠検査薬を使うのは初めてだった。

「あ……」

検査薬の小窓には見る間に陽性の印が現れた。数分待つ必要があると書いてあったのに、あっという間の反応に驚く。
陽性、妊娠しているということだ。
和馬の子で間違いない。避妊はしていた。しかし、避妊だって百パーセントではない。
月のものが来なくなってからずっと可能性は考えていた。そして充分に悩んできた。
……答えはもう出ている。
トイレを出ると、琴絵さんがリゾットを温めておいてくれた。

「どのくらい食べられるかわからないから、自分でよそってね」
「琴絵さん」

私は歩み寄り、妊娠検査薬のスティックを見せた。琴絵さんもその意味が理解できたようだ。

「月子……、和馬くんの子でしょう」

私は頷いた。私たちにあったことは、概ね琴絵さんに話してある。
< 38 / 158 >

この作品をシェア

pagetop