元カレ救命医に娘ともども愛されています
「和馬くんに相談しなさい」
「言えない。和馬に言えば、復縁を申し込まれるから」
「こうなったら復縁もやむなしじゃない。月子も嫌いで別れたわけじゃないでしょう」
「だけど、子どもができたくらいであのお父さんが私と和馬の仲を許すとは思えない。むしろ、この子だけ奪おうと画策するかもしれない」
私はまだなんの実感もないお腹を撫でる。
あの父親なら有り得る話だ。和馬が縁談を受け入れなかったときの保険に、この子を養育し、跡継ぎに育てたいと望んでもおかしくはない。
「和馬の不利益になりたくなくて別れたんだ。彼のお父さんの力で、和馬が医師として活動できなくなるのは嫌。私が黙っていれば、和馬はきっとお父さんの勧める縁談に頷く」
「じゃあ、月子のお腹にいる子はどうするの? 堕ろすの?」
「……できない」
愛する和馬の子だ。いや、お腹に命が宿ったと知った今この瞬間から、私はこの子の母親だ。死なせるという選択はできない。
「ひとりで……産んで育てたい」
「仕事は?」
「産休と育休を取る。私の収入ならシングルマザーとしてもやっていける」
「甘い!」
琴絵さんが厳しい声をあげた。
「子どもがいると、どうやったって同じようには働けないよ。仕事はセーブしなければならなくなるし、子どもが熱を出せば会社は休みや早退。同じペースでキャリアアップはできなくなるかもしれない。その覚悟はあるの?」
仕事を捨てきれるかわからないと、和馬と別れたときに思った。しかし、今はそうしなければいけない状況がそこにある。
ああ、私はすべてにおいて甘かったのだ。こうして抜き差しならない状況になって、初めて覚悟が決まるなんて。
「言えない。和馬に言えば、復縁を申し込まれるから」
「こうなったら復縁もやむなしじゃない。月子も嫌いで別れたわけじゃないでしょう」
「だけど、子どもができたくらいであのお父さんが私と和馬の仲を許すとは思えない。むしろ、この子だけ奪おうと画策するかもしれない」
私はまだなんの実感もないお腹を撫でる。
あの父親なら有り得る話だ。和馬が縁談を受け入れなかったときの保険に、この子を養育し、跡継ぎに育てたいと望んでもおかしくはない。
「和馬の不利益になりたくなくて別れたんだ。彼のお父さんの力で、和馬が医師として活動できなくなるのは嫌。私が黙っていれば、和馬はきっとお父さんの勧める縁談に頷く」
「じゃあ、月子のお腹にいる子はどうするの? 堕ろすの?」
「……できない」
愛する和馬の子だ。いや、お腹に命が宿ったと知った今この瞬間から、私はこの子の母親だ。死なせるという選択はできない。
「ひとりで……産んで育てたい」
「仕事は?」
「産休と育休を取る。私の収入ならシングルマザーとしてもやっていける」
「甘い!」
琴絵さんが厳しい声をあげた。
「子どもがいると、どうやったって同じようには働けないよ。仕事はセーブしなければならなくなるし、子どもが熱を出せば会社は休みや早退。同じペースでキャリアアップはできなくなるかもしれない。その覚悟はあるの?」
仕事を捨てきれるかわからないと、和馬と別れたときに思った。しかし、今はそうしなければいけない状況がそこにある。
ああ、私はすべてにおいて甘かったのだ。こうして抜き差しならない状況になって、初めて覚悟が決まるなんて。