元カレ救命医に娘ともども愛されています
「この子のために生きる。私が、私がって、そんな我執ばっかりだった。だけど、これからはこの子のために生きる」

そう言った私の目からは止め処なく涙が流れていた。

「この子が大事なの。和馬と同じくらい。和馬は私が離れることで守った。この子はずっと隣で私が守って育てたい」

琴絵さんが頷き、それから笑顔を見せた。

「よし、月子、引っ越そう」
「琴絵さん?」
「あんたのお腹の子、一緒に育てよう。環境がよくて、待機児童が少ない街に一軒家を借りてさ。ふたりでこの子を大人にしよう」

私は泣きながら首を左右に振った。

「そこまで琴絵さんを付き合わせられないよ。琴絵さんは浅岡さんと幸せになってほしい」
「私と彼は大丈夫。お互い、別々の時間が必要だから同居していないだけで、一生のパートナーだと思ってるから。私が可愛い姪っ子の子どもを一緒に育てるって聞いたら、きっと彼は理解してくれる。むしろ、『おじいさん役をやりたい』ってしゃしゃりでてくるかもよ」

顔を覆って泣く私の背を琴絵さんが撫でてくれる。ずっと一緒にいてくれた私の叔母は、どこまでも優しく頼りになる。

「ありがとう、琴絵さん」
「ほら、泣いてばっかりじゃ元気でないぞ。リゾット、食べられるだけ食べなさい」

優しい手にいっそう泣けてきて、いつまでも涙は止まらなかった。


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