元カレ救命医に娘ともども愛されています
「真優紀、見て。大きい木だね。蝉さんが鳴いてるね」
「だー、ぶぶう」

真夏の都内の公園、休日の午前中に私は真優紀と散歩に来ていた。ベビーカーには保冷剤を入れたし、何度も休憩して着替えさせているけれど、私も真優紀も汗だくだ。

「暑いねえ。休憩しちゃおうか」
「あーだだだあ」

真優紀はベビーカーから降りたがる。草地に下ろすと、満面の笑みでハイハイを始めた。感触が面白いのだろう。着替えを持ってきたからいいけれど、真優紀は草と土埃まみれだ。

「真優紀、ほらお茶を飲みに行こう」

手を差し出すとその手を頼って立ち上がろうとする。最近つかまり立ちを覚えたばかりなのだ。そのまま抱き上げたら、不満そうな声をあげた。
草を払い、公園内のコーヒーショップを目指した。中は冷房が効いている。カフェオレを一杯注文し席に腰掛け、ベビーカーに座らせた真優紀にマグで麦茶を飲ませた。こっくこっくと喉を鳴らして上手に飲む真優紀。

「午後は雨が降るらしいから、そろそろ帰ろうか」

窓から公園を眺め、私は呟く。
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