元カレ救命医に娘ともども愛されています
十月、私の三十一歳のバースデーがやってきた。
来月は真優紀の一歳のバースデー。琴絵さんと浅岡さんの四人でお祝いする約束をしている。一歳から食べられるケーキを準備し、真優紀の好きなさつまいもやにんじんでごはんプレートを作るのだ。久しぶりに一眼レフを出してきて、真優紀の写真をたくさん撮ってもいい。自分の誕生日より娘の誕生日が待ち遠しい。

「月子先輩~」

昼食時、デスクでお弁当を広げていると、隣のデスクの桜田さんが話しかけてきた。

「昨日、私、通院で有休もらったじゃないですか~」
「うん、大丈夫だった?」

桜田さんは一年半前の盲腸手術のときに、良性の卵巣嚢腫が見つかり経過観察中だと言っていた。数ヶ月に一度、婦人科にかかっている。

「それで、久しぶりに再会しちゃったんですよ。イケメン医師と」
「イケメン?」

桜田さんはふふっと笑う。

「私が救急車で運ばれたとき、受け入れ担当だったイケメン救命医! 月子先輩知ってるでしょ~?」

私は凍り付き、反応に困った。彼女が言っているのは和馬のことだ。彼女が手術をした野木坂総合病院は和馬の勤務先。同じ病院内の婦人科にかかっているのだろう。
困惑する私には気づかず、桜田さんはなおも言う。

「血液検査があって、病院内をうろついてたら偶然会って。その節はお世話になりましたーって、挨拶したんですよぉ。そしたら、ええと円城寺先生? あのお医者さんと月子先輩って顔見知りだったんですね! 言ってくれたらよかったのに~」
< 47 / 96 >

この作品をシェア

pagetop