元カレ救命医に娘ともども愛されています
大学時代ひとつ下の後輩だった彼。
当時から背が高かったけれど、もうひとまわりたくましくなったように見える。すっきりとした目鼻立ち、一重の目は綺麗なアーモンド型でミステリアスな印象だ。大学時代はとにかく女子に人気があった。
ダークブラウンの髪は昨晩はセットされてあったけれど、夜勤明けにシャワーでも浴びたのか前髪が下ろされている。それが大学生時代を思い出させた。

「お久しぶりです。偶然のことで驚きました」
「久しぶり。桜田さんのこと、ありがとう。会社の後輩なの。今、顔を見てきた」
「仕事のうちです。それに、外科のメンバーがまだ残っていたので、執刀はそちらに任せましたしね」
「その後も今まで、高度医療救命センターに詰めていたんでしょう。お疲れ様」
「仕事ですから」

私と彼の間をさあっと風が吹き抜けた。心地よい初夏の風だ。円城寺くんが優しく目を細める。

「変わってませんね。月子さんは」
「変わったでしょう。六年ぶりくらいだし」
「綺麗になりました」
「無理して褒めないの。円城寺くんは大人っぽくなったね」

私が笑うと、円城寺くんは一歩踏み出す。さっきより近くに、整った顔とたくましい身体がある。妙に緊張した。

「あの、今度一緒に食事でもどうですか?」

それは、なんともわかりやすい誘い文句だった。しかし、彼のような美しい男性がおずおずと慣れない様子で口にすると、不釣り合いでこっちまで恥ずかしくなってしまった。彼が真剣な顔をしているから余計に。

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