元カレ救命医に娘ともども愛されています
「悪いが、DNA鑑定をさせてもらう。妊娠出産の時期は、調べたし知っている。交際期間を考えれば、俺の子である可能性が高い」
和馬が疑問を疑問のままにしておかないことは想定していた。私は悪あがきをやめることにして、まっすぐに彼を見つめ直した。
「その必要はないわ。あなたの子よ」

和馬が息を呑むのがわかった。確定の言葉が、私からもたらされるとは思わなかったのかもしれない。

「あなたと別れて半月ほどで妊娠に気づいた」
「どうして言ってくれなかったんだ」
「和馬との恋愛は終わっていたから。だけど、お腹の命を死なせることができなかった」

和馬への愛情があるからこそ、お腹の子を産みたいと願った。しかし、そんな本心は言えない。
事務的に冷静に、私は話を続ける。

「あなたのお父さんに、娘を奪われるんじゃないかと思って隠した。知らないなら、これからも隠し続けたい。和馬と会うのも今日限りにしたい」

和馬が険しい顔をし、自嘲気味に呟いた。

「俺の子なのに、俺はきみと娘の人生に関われないのか」
「ここからはお願いです。どうか、そっとしておいて。あなたにはあなたの人生がある。それを私と娘は邪魔したくない」

頭を下げた私に和馬の言葉が降ってきた。

「それはできない」

思わず顔をあげた。過去、別れすら飲みこんでくれた和馬。私はどこかで彼は同じように理解を示してくれると考えていた。
今、私を射貫く和馬の瞳には冷たい光ではなく、燃える情熱が見えた。
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