元カレ救命医に娘ともども愛されています
「月子、チャンスがほしい。きみの気持ちを取り戻し、真優紀の父親になるチャンスをくれないか」

和馬はそう言って深く頭を下げた。

「頼む。あのとき、遠目で見たあの女の子に会いたい。父親になりたいんだ」
「やめて、顔をあげて」
「せめて、一度会わせてくれないか。実の娘なのに、抱き上げることもできずに離れるのは苦しい」

和馬はいつまで経っても頭をあげず、私は困り果てた。
「無理よ」
「頼む」

席を立ってしまおうか。和馬と完全に離別するなら、この機会にはっきりと拒絶すべきなのだ。
しかし、娘に会いたいと願う父親を放置するのはあまりに心苦しかった。

(和馬は、夏に私と真優紀を見てからずっと心の中で愛着を育て続けてきたのかもしれない)

自分の娘だと疑い、調査を進めていくうちに、娘に直接会う日を夢見るようになっていったのだとしたら。

「一度で、いいの?」

和馬の強い気持ちに負け、私はぼそりと尋ねた。和馬がようやく顔をあげ、頷いた。

「できたら、何度だって会いたいよ。だけど、きみが嫌なら一度だけだっていい。真優紀に会いたい」
「……わかった。今度、真優紀に会わせます」

優しく思いやりある人だと知っている。彼の気持ちは本物で、これほど真優紀に会いたがっている和馬を無下に扱えない。

「復縁は考えられない。だけど、一度だけ真優紀に会わせます」

断言すると、和馬は感極まったように目を細めた。

「ありがとう、月子」

再び頭を下げた和馬を見つめ、私は困惑し、答えがわからなくなっていた。




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