元カレ救命医に娘ともども愛されています
「人見知りがあって、男性が苦手なの」
私はシートベルトをはずして真優紀を抱き上げた。背をさすって、揺らす。
「そうか、そういう時期だよな」
つぶやいた和馬の顔には確かに落胆が見えた。申し訳ない気持ちが募る。せっかく会えたのに、顔もろくに見られないのでは和馬もやるせないだろう。
「時間が経てば慣れるから、もう少し待って」
ベンチに腰掛け、持ってきた赤ちゃん用のおせんべいと麦茶のマグを取り出した。私にがっしりしがみついて、和馬の方をちらちら見ては顔を隠す真優紀。その手を拭いておせんべいを持たせると「あうー」と声をあげた。好物の存在に気がまぎれたようだ。
「今月が誕生日だろう。一歳児としてはしっかりした骨格だし、健康そうだ。表情も豊かだね」
「おかげさまで元気で健康だよ。保育園であれこれ風邪をもらった時期もあったけど、最近はだいぶ丈夫になったと思う」
「そうか。免疫が高いんだろう。でも今は年中、色々なウイルスや細菌の風邪があるから気を付けて」
当たり障りのない会話は他人行儀で、違和感よりもちょうどいい距離なのだと思えた。私と彼は他人なのだ。恋人だったのは過去のことで、今ふたりの子どもをここに交えても、溝は埋まらない。
やがて、真優紀は少し慣れたようで、おせんべいを食べ終わると私の膝から降りたがった。膝とベンチにつかまって立つ。そのまま手をついて移動を始めた。よちよちとしたつたい歩きを和馬が目をみはって見つめている。
「上手だね」
「ひとりで立つこともできるの。まだ一歩は出ないけれど」
私の言葉に応えるように、真優紀は両手を離してバランスを取った。しかしすぐにその場に座り込んでしまう。咄嗟に和馬が腕を伸ばしかけた。しかし、真優紀は慣れた様子でハイハイの姿勢に戻り、和馬も手を出せばまた泣かせてしまうと思ったのか引っ込めた。
私はシートベルトをはずして真優紀を抱き上げた。背をさすって、揺らす。
「そうか、そういう時期だよな」
つぶやいた和馬の顔には確かに落胆が見えた。申し訳ない気持ちが募る。せっかく会えたのに、顔もろくに見られないのでは和馬もやるせないだろう。
「時間が経てば慣れるから、もう少し待って」
ベンチに腰掛け、持ってきた赤ちゃん用のおせんべいと麦茶のマグを取り出した。私にがっしりしがみついて、和馬の方をちらちら見ては顔を隠す真優紀。その手を拭いておせんべいを持たせると「あうー」と声をあげた。好物の存在に気がまぎれたようだ。
「今月が誕生日だろう。一歳児としてはしっかりした骨格だし、健康そうだ。表情も豊かだね」
「おかげさまで元気で健康だよ。保育園であれこれ風邪をもらった時期もあったけど、最近はだいぶ丈夫になったと思う」
「そうか。免疫が高いんだろう。でも今は年中、色々なウイルスや細菌の風邪があるから気を付けて」
当たり障りのない会話は他人行儀で、違和感よりもちょうどいい距離なのだと思えた。私と彼は他人なのだ。恋人だったのは過去のことで、今ふたりの子どもをここに交えても、溝は埋まらない。
やがて、真優紀は少し慣れたようで、おせんべいを食べ終わると私の膝から降りたがった。膝とベンチにつかまって立つ。そのまま手をついて移動を始めた。よちよちとしたつたい歩きを和馬が目をみはって見つめている。
「上手だね」
「ひとりで立つこともできるの。まだ一歩は出ないけれど」
私の言葉に応えるように、真優紀は両手を離してバランスを取った。しかしすぐにその場に座り込んでしまう。咄嗟に和馬が腕を伸ばしかけた。しかし、真優紀は慣れた様子でハイハイの姿勢に戻り、和馬も手を出せばまた泣かせてしまうと思ったのか引っ込めた。