元カレ救命医に娘ともども愛されています
翌週、和馬は早速次に会う機会をセッティングして誘ってきた。
会わせると約束した手前、張り切って誘ってくる和馬を簡単に拒否できない。
キッズルーム付きの個室レストラン、遊具がたくさんある公園、屋内の体験型施設……。二週間と開かずに誘ってくるのだからまめな人だ。
遠方は車を出すと言ってくれるが、私ははっきりと断り電車で向かった。真優紀は人見知りをするけれど、電車などは抱っこ紐の中にいればいい子で過ごせる。
徐々に真優紀は、よく会う存在として和馬を認識するようになっていった。最初のような過剰反応はしなくなり、和馬が近くにいても警戒の様子を見せなくなってきた。もちろん、何か不安になれば私のところにハイハイでダッシュしてくるけれど。

五度目の対面は水族館だった。冬休み期間の混み合った館内、ベビーカーは預けて、抱っこ紐で真優紀を運んだ。

「俺が抱っこできればよかったんだけれど、まだ真優紀には怖いよな」
「いつものことだから、気を遣わなくて大丈夫」

そう言って私は自分の言葉が冷たく響くのに嫌気がさした。和馬は変わらずにいてくれるのに、私はいつも和馬に冷たくし距離を取り続けている。それが正解だとしても、和馬の気持ちを思うと胸が痛む。
開けた水槽にはペンギンが群れをなしていた。

「ペンギン。ペンギンだよ」

私の腕の中の真優紀に話しかける和馬は、穏やかで楽しそうに見えた。休みを調整し、私と真優紀を連れ出すのは彼なりに幸福な時間なのだろうか。

(このまま時間を使わせすぎてはいけない)

和馬の気持ちに応えるつもりはないのだから、期待はさせてはいけないし、頻繁に会いすぎてもいけない。
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