元カレ救命医に娘ともども愛されています
「笑顔が見られたのは嬉しい。だけど、その……欲深いことを言ってすまないんだが、抱き上げられるくらいまで真優紀には慣れてほしい。二歳までの約束は……」
「わかってる。二歳までという約束は守る。それまでには抱っこできるようになるよ」
継続して会ってもいいという返事に、和馬が安堵の息をついた。
「よかった。……ああ、真優紀はまだ笑ってるのか。可愛いな。なんて可愛いんだろう」
そう言って和馬は真優紀を覗き込む。真優紀は抱っこ紐から腕をのばし、水槽を指さしている。和馬に何か伝えたいようで「あーあー」と言っている。慣れた人にしかしない態度に、真優紀の心の融和を感じた。
「でも、あまり無理はしないで。忙しい仕事でしょう。頻繁に私と真優紀を誘わなくていいから」
「俺がふたりに会いたくて誘ってるんだよ」
真優紀を見る和馬の目はとろけそうに優しく、愛情があふれていた。
和馬の思い出に真優紀の笑顔をと思ったのは事実だけれど、こうして仲が深まれば、次はふたりを引き離すことに罪悪感を覚えるだろう。
アシカの水槽に移動する。ちょうど飼育員が整備に入っていて、アシカは楽しそうに足下の床をつるつると滑っていた。真優紀がまた「あー」と指さし確認をし、私も和馬も思わず笑った。
「月子、好きだよ」
次の瞬間、和馬はさらっと言った。水槽に向かい合った格好でこちらを見ずに。私もアシカを見ながら返事をする。
「応えられない」
「……わかってる。だけど、こうして束の間家族みたいに過ごしていると錯覚しそうになる。あの頃、実は俺たちは別れずに結婚できていて、離れ離れになった現実の方が偽物みたいだなって」
「夢みたいなことを言わないで。そんなロマンティストだったっけ」
そう笑って見せて、思い出した。ああ、この人は告白にバラを用意する人なんだった。
「そうだな。変なことを言ってごめん。だけど、俺は今、すごく嬉しくて幸せだよ。その気持ちを伝えたかった」
和馬の言葉には情熱があった。一方で、寂しさもあった。
彼をかき乱しているのは私なのだ。
「わかってる。二歳までという約束は守る。それまでには抱っこできるようになるよ」
継続して会ってもいいという返事に、和馬が安堵の息をついた。
「よかった。……ああ、真優紀はまだ笑ってるのか。可愛いな。なんて可愛いんだろう」
そう言って和馬は真優紀を覗き込む。真優紀は抱っこ紐から腕をのばし、水槽を指さしている。和馬に何か伝えたいようで「あーあー」と言っている。慣れた人にしかしない態度に、真優紀の心の融和を感じた。
「でも、あまり無理はしないで。忙しい仕事でしょう。頻繁に私と真優紀を誘わなくていいから」
「俺がふたりに会いたくて誘ってるんだよ」
真優紀を見る和馬の目はとろけそうに優しく、愛情があふれていた。
和馬の思い出に真優紀の笑顔をと思ったのは事実だけれど、こうして仲が深まれば、次はふたりを引き離すことに罪悪感を覚えるだろう。
アシカの水槽に移動する。ちょうど飼育員が整備に入っていて、アシカは楽しそうに足下の床をつるつると滑っていた。真優紀がまた「あー」と指さし確認をし、私も和馬も思わず笑った。
「月子、好きだよ」
次の瞬間、和馬はさらっと言った。水槽に向かい合った格好でこちらを見ずに。私もアシカを見ながら返事をする。
「応えられない」
「……わかってる。だけど、こうして束の間家族みたいに過ごしていると錯覚しそうになる。あの頃、実は俺たちは別れずに結婚できていて、離れ離れになった現実の方が偽物みたいだなって」
「夢みたいなことを言わないで。そんなロマンティストだったっけ」
そう笑って見せて、思い出した。ああ、この人は告白にバラを用意する人なんだった。
「そうだな。変なことを言ってごめん。だけど、俺は今、すごく嬉しくて幸せだよ。その気持ちを伝えたかった」
和馬の言葉には情熱があった。一方で、寂しさもあった。
彼をかき乱しているのは私なのだ。