元カレ救命医に娘ともども愛されています
このままではいけない。その気持ちだけがある。
琴絵さんは和馬と会う私を見守っているけれど、本心は心配しているだろう。私自身、不安がずっと晴れない。
娘に会いたがっている和馬に罪悪感で会い続けても、いずれ別離するならいたずらに傷つけるだけなのではないだろうか。
地方に引っ越そうか。仕事を辞め、真優紀とふたりで和馬とは簡単に会えない場所に行く。そうすれば、今後の彼の人生を邪魔することはない。
真優紀を優先すると、授かったときに決めている。仕事は大事だけれど、真優紀と和馬のために選択することも必要ではないだろうか。

(そうすれば、この気持ちも忘れてしまえる)

和馬と過ごすことであの頃の熱い炎が消えずにそこにあると気づいてしまった。私はまだ和馬を愛している。
だけど、彼の気持ちに応えれば、真優紀を巻き込んで彼の父親との争いになるだろう。和馬の現在の職場にも影響が出る。
そして、いずれ大病院を継ぐ和馬の妻に私が相応しいかもわからない。
少なくとも、彼の父親が望むような良妻賢母……専業主婦になり子どもを数多く産むという期待には応えられない。
駄目だ。堂々巡りになってしまう。

「月子先輩、ミーティング始まりますよー」

桜田さんに呼ばれ、私はハッと顔をあげる。仕事中もこんなことを考えて身が入らないようではいけない。

「今、行くね」

私はPCをスリープさせて立ち上がった。
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