元カレ救命医に娘ともども愛されています
「……ということで、今回のイベントには我が社も大きな役割を果たします。特別チームには特販部からも選抜され、来月からイベント終了の夏までは、専任で動いてもらいます」

部長補佐の社員の説明に、特販部の40名は皆頷いた。株式会社サンカイは総合商社としては大企業であり、扱う商材に寄って営業部が違う。私の所属する国内特販部は、サンカイが建材の卸しを手掛けていた時代から続く部署であり、名前こそ代々変わっているがいまだ建材の扱いをメインにしている。
東京都が主催するイベント会場建設に、取引先の大手建築会社が内定し、部材の卸しが我が社に回ってきた格好だ。他にもこのイベント関連でサンカイが受注している仕事も多く、社内で特別チームが作られることになったのである。

「特販部からは、河田さん、江端さん、山本さん、武藤さんの四人に参加してもらいます」

そう言われて私は顔をあげた。内示がなかったので初耳である。

「呼ばれた社員は前へお願いします」

私でいいのだろうか。いまだ育休中で時短勤務だというのに。困惑顔をしてしまう私に、桜田さんが「月子先輩、前ですって」と声をかける。前に出ると、社員の視線を感じた。
部長が立ち上がり、紹介するように横に立った。

「ええ、四人は今までの実績で抜擢しました。武藤さんは、お子さんも小さく時短勤務ですが、勤務時間内で充分担える業務を担当していただきたい。育児における時短勤務でスキルアップ、キャリアアップのチャンスを逃すのは、もったいないでしょう。武藤さんにはいい前例になってほしいと思っています」

部長の言葉に拍手が起こり、私は慌てて頭を下げた。
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