元カレ救命医に娘ともども愛されています
ミーティングが終わり、桜田さんに誘われてそのまま外に昼ごはんを食べに出かけた。

「部長、月子先輩を使って『ママにも働きやすい職場』のアピールしたいんですね! 月子先輩ができる人だからって、広告に使うなんて」

それは私も理解していた。出産後もキャリア形成がしやすく、能力次第で認められるという会社の取り組みを見せたいのだ。シングルマザーで娘はまだ一歳の私は、いい広告塔になるだろう。

「月子先輩はバリバリ働ける人ですけど、時短で帰れないときは相談してくださいね。私もお手伝いしますから」
「ありがとう、桜田さん。山本さんにも困ったら言って言われたよ。彼女のお子さん、もう高校生だから」
「山本さん、超忙しい営業二課から一昨年異動でしたよね。河田さんは若いけどできるって評判だし、江端さんはチームリーダー経験者だし。う~ん、今回の抜擢は純粋に評価が高い人を選んだって感じですねえ」
「足引っ張らないように頑張らないと」
「月子先輩も評価が高いんですよ!」

桜田さんはそう言ってくれるが、やはり私は『ママで時短勤務中だけど特別グループに大抜擢』という前例作りのためである気がする。
いや、選んでもらえたからには頑張らないと。
同時に、地方に引っ越しなどと考えていた朝のことが遠く感じられた。生活のためとはいえ、私は仕事が好きだし、こうして背中を押してもらえれば期待に応えたいと感じる。やはり、簡単に捨てられるものではないのだ。
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