元カレ救命医に娘ともども愛されています
週末、和馬に誘われて、屋内の体験施設へ行った。郊外にある科学館で子どもが体験できるものも多い。赤ちゃんOKのプラネタリウムや大型映像もある。
電車で行くと言ったら、和馬も合わせて電車でやってきた。駅からは少し遠く、歩くとちょっとした散歩になった。寒い冬の日で真優紀の頬は真っ赤だった。
大型映像を見て、館内を回った後に館内のカフェに入る。

「……そうか、特別チームに抜擢なんてすごいな」

和馬は私を見て、笑顔で言った。自慢したかったわけではない。報告だ。

「土日も出なければならない日もたぶんある。土曜は保育園の一時預かりを利用して、日曜は叔母に頼むことにする」

部長は時短勤務の範囲内でと言ったが、確実にできるとは限らないのだ。少なくとも過去の似た事例では、担当社員は大量の業務に忙殺され、休日出勤も多かった。

「あまり会えなくなるから」
「わかった。真優紀と月子に会えないのは寂しいけど我慢するよ。真優紀も随分慣れてくれたしね」

そう言って真優紀を覗き込む和馬。真優紀は離乳食も進み、頼んだプリンをぺろっと平らげたところだ。

「だーあ、あー」

そう言って和馬に向かって手をのばしている。ベビーチェアに飽きた様子だ。
和馬が私をちらっと見るので、私は頷いた。

「抱っこしてあげて」

真優紀はすっかり和馬に慣れ、最近は会えば笑顔になり、自分から抱っこをせがむようになった。そういった娘の変化に私は戸惑いつつも、和馬のとろけそうな笑顔を見ると複雑な気持ちになる。
膝にのった真優紀はお冷を持ちたがり、和馬のサポートでごくごくと飲み干した。

「コップ上手だね、真優紀」
「あい」

父と娘の寄り添う姿は、最初からそこに存在していたかのように自然に見えた。
< 70 / 158 >

この作品をシェア

pagetop