元カレ救命医に娘ともども愛されています
「……和馬、どうしてあんなことを言ったの?」

充分、彼女が遠ざかってから、私は和馬に視線をやった。苛立ちと不安感でどうしても視線も口調もきつくなった。

「すまなかった。月子と真優紀に迷惑をかけたかったわけじゃない」
「充分迷惑だよ。この先、あなたと復縁する気もないし、離れる前提で会っているんでしょう。忘れたの?」

和馬は力なく首を左右に振った。

「本当に悪かったと思っている。だけど、どうしても彼女に好き勝手言われたくなかった。俺には他に愛する人がいて、最愛の娘がいると言いたかった。好きなのは月子だけだから」
「あなたの主張に私と真優紀を使わないで。あのお嬢さん、絶対に私と真優紀のことをあなたのお父さんに言うでしょう。それは本当に避けたいのよ!」

和馬がふっと表情をいぶかしげにゆがめた。

「月子……やっぱりきみは俺の父親に何か言われたのか?」

ぎくりとした。しかし、真実を言うつもりはない。
和馬はなおも探るように私を見つめる。

「きみは再会してからもずっと俺の父親の存在を気にしている。嫌な目にあったのは申し訳なかった。だけど、俺はそこまで父親を恐れてはいないし、伝わらなくても意見は口にしているつもりだ。だけど、きみはとにかく『関わりたくない』の一点張り」

私はむっつりと黙った。和馬は知らないのだ。彼の仕事を盾に、私に別れろと迫った父親のことを。

「……もしかして、俺の知らないところで何か言われていたのか? たとえば脅されるようなことがあったのか? 別れた理由もそれが……」
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