元カレ救命医に娘ともども愛されています
「うぬぼれないで。あなたと別れたのは、うまくいかなくなったから。恋が終わったからよ」

きっぱりと私は言い切った。我ながら堂々とした口調はなかなか役者だと思う。

「お父さんに知られたくなかったのは、真優紀を養子になんて言い出すんじゃないかって不安だったから。和馬が結婚していないなら、余計にそういう話になるんじゃないかって思ったの」
「……絶対にそんなことはさせない。月子から真優紀を奪わせるようなことは。俺が責任を持つ」

和馬が言い、私は眉間にしわを寄せたままベビーカーを押して踵を返す。もうこれ位以上話していてはいけない。

「月子……! また連絡する」

振り返らずに改札をくぐった。さよならも言わずにエレベーターを目指して歩く。
お父さんとのやりとりを口にせずに済んだことだけはよかった。
大変なことになったと動揺しながら、和馬がどんどん私の中で大きくなっていくのを感じていた。彼があの若い女性に対し、私こそが恋人だと宣言してくれたこと……私は確かに嬉しくも思っていたのだから。

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