元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬の縁談相手と遭遇した日から三日、私は和馬に再び呼び出されていた。
まだ例のイベントプロジェクトは始まっていないので余裕はあるけれど、赤坂の和馬のマンションに行くのはためらわれた。同時に、込み入った話になるのも感じていたので、真優紀のお迎えを琴絵さんにお願いした。
琴絵さんは今日までに起こったことをだいたい把握してもらっている。トラブルを抱え込んで迷惑をかけたくなかったというのもあるけれど、琴絵さんが心配しているというのが一番の理由だ。今日、和馬に会いに行くのも「電話にしたら?」と言っていた。

「会って話したいと言われてるから」

そう答えながら、いよいよ和馬と会うのをやめないといけないと考える。和馬は結婚を断っていても、和馬の周囲は推し進めようとしているのがよくわかった。
私のスタンスを決めなければ。和馬と復縁はしない。もう揺れない。
あのちょっと変わったご令嬢……和馬を好いている女性。少なくとも、和馬の父親は彼女がいいと推しているのだ。
会社帰りに懐かしい和馬のマンションを訪ねた。ほんの二年前まで、何度も夜を過ごした場所。

「月子、来てくれてありがとう」
「話が終わったら帰ります」

和馬の部屋は相変わらず生活感がなく、眠りに帰っているだけのような雰囲気が漂っていた。
夕暮時の都心の街並み。ビルに灯りがともりだす時間だ。
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