元カレ救命医に娘ともども愛されています
「早速だけど」

ドリップコーヒーを私の前に置き、それから和馬は封書を差し出した。

「彼女から手紙が来た」
「手紙……、見てもいいの?」
「きみ宛てでもある。きみと真優紀のことはあちらの親族にも、うちの父親にも伝えられた。全員が俺に怒り狂っているよ……彼女以外ね」

彼女以外というのはどういうことだろう。促されて手紙を開く。
そこにはびっしりと細かい文字で麗亜さんの思いのたけがしたためられていた。
和馬との出会い。家同士の繋がりと思っていた縁談から恋に落ちたという内容は、やがて結婚を断られるという悲しみに変わる。そして、先日の私と真優紀との遭遇、ショック……。
はっきりと書かれてあったのは『諦められない』という気持ちだった。

「『和馬さんを愛しています。隠し子くらいでこの気持ちは変わりません』って書いてあるよ」

和馬は眉間にしわをよせ、黙っている。
手紙は、彼女がこれから励む努力が書かれ、いかにして和馬のいい妻になれるかを語っていた。

「『あのお嬢さんを私たちの娘として育てるのはどうでしょう』……何を考えてそんなことが言えるのかな。絶対に真優紀は渡さないから」
「もちろんだ。真優紀はきみの娘だ」

手紙の最後には私宛のメッセージがあった。伝えてほしいという体で。

「『あなたが和馬さんに相応しい女性でしたら、反対されることもなかったでしょう。隠れて和馬さんの寵愛を受け続けていたことは許します。ですがこれで終わりにしてください。今後、和馬さんに近づかないでください』……彼女はこう言ってるけど」
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