元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬の人生を私が歪めたことに間違いはない。ここから無理に家族に修復なんてしても、きっとほころびが出る。
そうやってまた別れを選べば、今度は私と和馬だけじゃない。真優紀だって傷つくのだ。

「月子、今すぐにきみの気持ちが動くとは思っていない。だけど、うちの父親がまだ何をしてくるかわからない。しばらくはちょくちょく顔を見せに来たいんだ」
「……それは」
「父の動向は家人を通じてわかるようにしてある。何かあれば駆けつける。この件については俺の責任だから……どうかきみと真優紀を守らせてほしい」

私はしばし黙ってから頷いた。私の態度の軟化に和馬がわずかにホッとした表情を見せた。

「和馬、お父さんとはこの先も対話を持ち続けた方がいいと思う。私との結婚云々ではなくて、親子として理解し合えていない状況は、お互いよくないんじゃないかな。この先も和馬の人生に干渉してくるのだろうし」

私は真顔で和馬を見つめた。

「今日まで和馬が完全にお父さんを拒絶しきれないでいたのは、お父さんの寂しさを知っていたからでしょう。離婚、お兄さんの海外赴任。和馬はお父さんをひとりにしたくないんだと思うよ」
「あんな性格の人だ。……ひとりになっても自業自得だよ」
「そうやって割り切れないのが親子なんじゃないかな。もちろん、和馬の負担になるなら、縁を切ってしまうのも必要だと思う」

私は言葉を切って、少しだけ笑った。

「和馬は和馬で闘って。私は私で真優紀を守るために闘うから」
「わかった。ありがとう、月子」

ほどなくして、私は車を降り家へ向かった。和馬は私の背が見えなくなるまで見守っていたのだと思う。優しいまなざしを感じた。
< 87 / 158 >

この作品をシェア

pagetop