元カレ救命医に娘ともども愛されています


思わぬ再会と新たな誘い。私はふわふわした頭で自宅に戻った。
大きな商店街のある街に、私は叔母とふたりで住んでいる。商店街で買ったサンドイッチを手にマンションの一室に帰り着くと、叔母の琴絵が起きてきたところだった。

「琴絵さん、今起きたの? もう十二時だけど」
「せっかくの休みだもん」

琴絵さんは頭を掻いて洗面所に向かう。美術館で学芸員をしている琴絵さんは、オンはぱりっとしているけれど、オフはちょっとだらしない。
四十五歳、私より十六歳年上の叔母だ。

「サンドイッチを買ってきたよ。コーヒー淹れるから、お昼にしよう」
「コーンポタージュも飲みたいなあ」
「インスタントの買い置きあったよね。出してくる」

私は食材ストッカー用の棚をのぞきに行く。
女ふたり暮らしも十四年になる。
私が中学三年生のときに両親が事故で亡くなった。祖父母は遠方で老齢。私といっしょに暮らしてくれたのは父の妹の琴絵さんだった。
両親の残してくれたお金は少しあったけれど、それは私の学費に、と琴絵さんは賢明に働いてふたり暮らしを支えてくれた。高校からは私もアルバイトを始め、どうにか大学にも入れた。就職してからもふたり暮らしだったのは、節約とお互いラクだったのが理由だけれど、おそらく琴絵さんは両親を亡くした私が寂しくないようにそばにいてくれたのだと思う。
同時に、彼女にも結婚を考えた相手がかつてはいたのではないかと考えてしまう。私のせいで、人生が変わってしまったのかなとも思う。
琴絵さんはけっしてそんなことは言わないし、長く付き合うパートナーの男性は紹介してもらっているけれど。

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