元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬のマンションまで歩き、地下の駐車場で真優紀を抱っこ紐から出した。そのとき、両脇に手を差し入れて真優紀の身体が熱いことに気づいた。ずっとママコートで包んで抱っこしていたから、お互いの温度で温かいのは普通だと思っていたけれど、これはかなり熱い。

「真優紀?」

声をかけると真優紀はぼんやりしている。電車の中でずっと眠っていたせいじゃなく、普段より静かだ。
首筋に手を当てるといっそう熱かった。これは熱だ。

「和馬、この子熱が出てるみたい」
「……どれ。真優紀、みせてごらん」

後部座席のチャイルドシートに座らせ、和馬が真優紀の首筋に手を当て、口を開けさせる。中を覗き込み、「見えないな」と呟くので、隣で私がスマホのライトを照らした。

「真優紀、朝ごはんは食べられた?」
「最近、気分で食べてくれない時があって、今朝は幼児用のスティックパンを半分くらい。麦茶は朝から何度も飲んでる。さっきも和馬が来る前に公園で飲んだよ」
「水分が取れているのはいいけれど、息が少し苦しそうだ。保育園で流行っている風邪はある?」
「インフルエンザがちょっと前に。あとは確か上のクラスでお休みしてる子がいるって先生が……。病名とかは聞いてない」
「了解」

私たちのやりとりの間に、真優紀はけほけほと咳き込み始める。見る間に咳がひどくなり、私は慌てて真優紀の背をさすった。
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