元カレ救命医に娘ともども愛されています
「真優紀、麦茶飲んでみよう」
「やっ、やー!」

真優紀は首をねじって麦茶を避け、それからまた咳き込み、苦しいのか泣き出した。その泣き声もひどく弱いし、咳はどんどんひどくなる。

「どうしよう。私が連れ出したせいで……」
「いや、症状が出てなくて気づかないことはよくある。日曜か……かかりつけの小児科は休みだよな」
「うん……」
「わかった。うちの勤務先なら休日診療をやっている。今から行こう。保険証と乳児医療証はある?」
「ある……」

一瞬迷った。和馬の職場に真優紀を連れて行っていいのか。和馬はなんと説明するのだろう。
しかし、すぐにその考えが自分本位だと気づいた。今はそんなことを考えている場合ではない。真優紀の体調を心配すべきだ。

「お願いします。病院に連れて行って」
「もちろん。真優紀、もう少し我慢してくれよ」

和馬は優しく真優紀の額を撫で、運転席に乗り込んだ。私も真優紀の隣の後部座席に乗る。
病院は近所にあるため、五分ほどで到着した。高度医療救命センターに隣接した休日診療室へやってくると、待合室は混み合っていた。
受付へ向かうと看護師さんが和馬の顔を見て、目を見開いた。

「円城寺先生、今日はどうされたんですか?」
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