元カレ救命医に娘ともども愛されています
和馬はにっこり笑って答えた。

「友人の子どもが熱を出してね。今日、休日診療担当は田崎先生だったかな」
「はい。でも、今ちょっと診療がストップしてまして」

看護師さんが声をひそめて言う。

「高度医療救命センターの方に自動車事故の患者さんがいっきに四名入って、そちらに呼ばれてます」
「……俺にオンコールは入ってないけど」
「今いる人員でどうにかする予定だったみたいですけど、まわらなくて田崎先生にヘルプ要請が……」
「わかった」

和馬は頷き、看護師さんに向かって告げた。

「俺が救命の方入る。田崎先生はこっちに戻ってもらわないと、待合がパンクするだろ」
「本当ですか! 円城寺先生、お休みなのに」
「問題ないよ」

笑顔で請け負い、和馬は私と真優紀を待合室の端のベンチに案内した。

「今からちょっと行ってくる。真優紀は熱があるから、隔離室に案内してもらえるよう手配しておくから、少しここで待っていて」
「和馬……」
「帰りは送ってあげられなくてごめん。……真優紀、お薬をもらえるはずだから、それを飲んで早く良くなるんだよ」

限りなく優しい微笑みを真優紀に向け、その頭を撫でると、和馬は笑顔で院内へ去っていった。

< 92 / 158 >

この作品をシェア

pagetop