元カレ救命医に娘ともども愛されています
その後、一時間ほど隔離室で待った。真優紀は朦朧としていて、弱くぐずり続け、あまり麦茶も飲んでくれない。咳もそうだけれど、呼吸が息苦しそうで見ていてつらかった。
朝はここまでではなかった。軽い咳だけだった。
それでも連れ出してしまったことを後悔し、どうしてもっと早く気づけなかったのかと胸が痛んだ。
診察の結果はRSウィルス感染症。子どもはよくかかる風邪ではあるけれど、重症化すれば入院と聞き背筋が寒くなった。まだ酸素の値が悪くないことと、呼吸がラクになる薬をもらったのでひとまず自宅療養となった。
タクシーで帰りながら和馬にメッセージだけ送っておく。疲れていたけれど、病院で解熱剤の座薬を入れたせいか真優紀はぐっすり眠っていて、それだけはホッとした。
帰宅すると琴絵さんが幼児用の経口補水液や、真優紀が食べられそうな柔らかな食品を集めておいてくれた。うどんを柔らかく煮て細かく切ったものを少し食べ、薬を飲むと真優紀は再び眠りに落ちた。
二十時頃に、和馬がわざわざ様子を見にやってきた。
眠りについた真優紀を大事そうに撫でると、リビングに戻ってくる。琴絵さんは気を利かせたのか、自室に行ってしまった。

「RSウィルスか。保育園には連絡しておいた方がいいね」

和馬の前にお茶を出し、糖分補給になればと最中と大福を置いた。

「ええ。明日、連絡する。お友達にも移しちゃったかもしれないし」
「真優紀もたぶん、お友達からもらってるよ。子どもはみんなかかるって言っていいくらいの病気だからね。ただ情報は大事だ。園で蔓延するのを防げるかもしれないし」

和馬は気づかわしげな笑顔で私を見た。
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