元カレ救命医に娘ともども愛されています
「月子は自分を責めなくていい。一気に症状が出たから、月子だって驚いただろう。今、真優紀を見たけれど、一生懸命眠って自己治癒をしようって身体が頑張ってる。月子はそばにいて、見守っていてあげてくれ」

その言葉に不覚にも涙が出そうになった。どうしても、自分のせいでという気持ちを消しきれなかったから。私はそっぽを向いて、こくんと頷く。
和馬が続けて言った。

「咳が止まらなかったり、呼吸音が悪くなったり、また呼吸が過度に苦しそうだったりしたら、ためらわず再受診して。脅すわけじゃないけれど、乳幼児は入院になることもあるから」
「わかった。和馬、今日は色々とありがとう。仕事、してきたんでしょう」

和馬はあのままヘルプで勤務についたはずだ。この時間に我が家にやってきたということは、おそらくは昼から何時間も拘束されたに違いない。

「センターはてんやわんやだったから、どっちみちオンコール……呼び出しが入っていたよ。この仕事をしているとよくあることだから。……月子は知ってるか。昔もこうやって月子をほったらかしにしてしまうことが何度もあったもんな」
「和馬の仕事は尊い仕事だと思うよ。そこに文句や不満はない。むしろ、格好いいってずっと思ってる」

私は強い口調で言った。彼の仕事を、私も大切に想っていることを知ってほしかった。

「ただ、そんな和馬を私は支えてあげられない。私はいつも自分のことばっかりに必死で……あの頃は自信が持てなかった」
「支えてほしいだなんて、今も昔も思ってないよ。月子が傍にいてくれるだけでよかった」
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