元カレ救命医に娘ともども愛されています
7.一時的な同居



4月がやってきた。日中は日差しが温かく、心地よい晴れの日が続いている。
新しい制服に身を包んだ学生や、スーツ姿が初々しい新社会人が電車に乗り込む。街はどこか慌ただしくも、さわやかな空気に満ちているように思える。
真優紀もひとつ上のクラスにあがった。発語も増え、手の使い方が巧みになり、歩くのも走るのも上手になった。表情がとても豊かで、真優紀の成長を見守る毎日は心から幸せだと実感する。

ただ、困ったことが続いていた。
私たちの住む古い一戸建ての近くに、見知らぬ人がうろついているのだ。通りすがりの人間とは明らかに違う。何度か家の前を通ったり、裏手の路地で待機していたり。私たちの出入りを監視しているようなのだ。
この監視と思われる人たちは、家の周りだけではなく、保育園周辺や駅前でも見かける。雑踏にまぎれて、私の職場近辺にもいるのかもしれない。
心当たりは和馬のお父さんだ。あの人が二月の一件で完全に納得したとは思えない。むしろ、一方的に和馬にはねつけられたと感じているかもしれない。
和馬には対話をお願いしているが、二年前に私との結婚について話し合いを持とうとしたときも、なしのつぶてだった。
私や真優紀の周辺を探り、粗探しをしているのだろうか。外に男性の影でも見つけて、和馬に私を諦めろというつもりか。それとも真優紀を円城寺家に迎えたいと思っているのか……。
< 97 / 158 >

この作品をシェア

pagetop