白縹の空の下で

第一章 泡沫と手紙

 初めてあの人に会った時、懐かしい感じがした。

 初めて訪れた場所の風景だったり、空を見て、時たま現れる感情が初めて人に起こった。
 あの感覚、あの感情を、スピリチュアルに示しているか、恋愛と示しているか、あるいは近づいてはいけないと示しているのか。私は分からない。

 中学生の頃を思い出した。あの人を初めて見たときのこと、今でも覚えている。職員室がある校舎から出てきて目の前にある体育館へ入っていく先生を見たのは、入院で長期期間休む佐々田先生の代わりにこの学校に来たと昼の放送で紹介される1週間前のこと。
  

 「昨日新しい先生みた」
 2年生で同じクラスになり、波長が合う良き友達の瑠衣に今日初めての話題を仕掛けた。瑠衣は特別な反応を見せず
 「あ〜、野球部の新しい副顧問?らしいよ。名前は、えっと確か、星野?せんせい…」
 そう言いながら後ろの席の野球部に「ねぇねぇ」と確認をしている。彼が軽く首だけ縦に振っているので星野先生で合っているんだろう。
 「そうなんだ。にしても情報得るのはやすぎー笑」
 瑠衣に何か悟られないように注意を払い、お互い共通の好きなアーティストの話をして、自分の席についた。

 昨日初めて星野先生を見た時から、なぜか無性に気になる。どこかで会ったことも無さそうだし、もちろん知ってる人でも無い。ただ、星野先生を見た時に凄く懐かしい感じがした。たったそれだけのことだったに……

 なんで私は手紙を書いてしまったんだ。
絶対私と面識がない訳で、一方的に私が手紙を渡していいのだろうか。困らせるだけなんじゃないか。いや学校だし先生だし生徒からの手紙くらいもらってくれるだろう。でもなんて言って声かけようか。これは勢いしかない。
 「よし…」
 星野先生がいる教室は一階のはず。教室の前に着き深呼吸してから覗いてみたけど先生の姿は見当たらなかった。安心しているのか惜しいと思っているのか東奔西走している気持ちを落ち着かせて部活へ向かった。
 
 「「「いーち、にー、さーん、」」」
 「休憩終わったらツーメン!」
 「「「はい!」」」

 体育館の扉の外に出て涼むのが私たちバスケ部2年の習慣。目の前には広い砂の校庭があって広く高い空が見渡せる。お気に入りの場所の一つ。野球部や陸上部、サッカー部が分けて使っている。
野球部の方に目を向けるとそこに星野先生もいた。

少し観察していたら休憩時間が終わった。
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