寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「っ、た、だいま。」
声が、震える。
笑顔のお母さんか、恐ろしくて。
………………心底、怖かった。
無意識に、私の視線が下を向く。
落ち着け。
何度も、そう、繰り返す。
「ねぇ、茉莉ちゃん?」
「………っ、な、何?」
高鳴る鼓動。
何を聞かれるのか。
お母さんに言われるのかが、怖かった。
強張る広角を、どうにか上げてた私は、恐怖心を覆い隠して、取り繕うように笑う。
何て、滑稽。
それでも、バレてはいけない。
この、胸の内を。
知られてはいけないのだと、幼い私の、それが自分を守る為の防衛本能だった。