寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「今日、茉莉ちゃんは、1回、家に帰って来た?」
そんな恐怖に怯える私を、目を逸らす事なく、お母さんがじっと見下ろす。
「っっ、」
はっと、息を飲む。
………バレたの?
ばくばくと、煩いぐらいに心音が鳴る。
嫌な汗が、背中を伝った。
「………………っ、今日…?」
声が、震える。
喉も、カラカラに渇く。
ごくりと、唾をのみ込んだ。
「そう、帰って来たのは、茉莉ちゃん?」
「………っ、」
………………大丈夫。
私だとは、バレてはいない。
莉茉と違う服を着せてしか、双子を見分ける事が出来ないお母さんには。
まだ、大丈夫。
ーーーー悪魔が、私に囁いた。