寵愛の姫 Ⅳ


「ん、どうした?」

「………何でもない。」



暁に視線を向ければ、柔らかく微笑まれるだけ。









先生は一体、何をあんなに気にしていたんだろうか?









この病室内には、私と暁しかいなかったのに。








釈然としない。



「莉茉、何か欲しいものでもあるか?」

「あ、ううん、大丈夫。」




問いに、首を横に振って答える。








診察中も、ずっと付き添っていてくれた暁。






少し(やつ)れた気がする。











申し訳なさと。





そこまで暁に思われている事を実感が出来て、嬉しさが込み上げた。
< 138 / 377 >

この作品をシェア

pagetop